専門家コラム
Expert Column

今国会で成立する見込みの景品表示法改正について、少し触れてみたいと思います。

不当表示は3種類、違反企業は毎年増えている

いわゆる、不当表示等に対する規制として景品表示法がありますが、不当表示には、大きく3つの種類があります。

  1. 優良誤認表示:商品・サービスの品質、規格、その他の内容についての不当表示
  2. 有利誤認表示:商品・サービスの価格、その他の取引条件についての不当表示
  3. その他 誤認されるおそれのある表示:一般消費者に誤認されるおそれがあるとして内閣総理大臣が指定する不当表示(例 原産国不当表示、おとり広告、老人ホームに対する不当表示等)

違反の程度が軽ければ注意や指導を受けるだけで済むこともありますが、近年インターネット広告も拡大している中、国や都道府県による「措置命令」や「課徴金納付命令」等の処分を受ける企業も増えてきています。

消費者庁の統計によると、2016年に措置命令を受けた企業等が27社(別途都道府県から1社)、課徴金納付命令を受けた企業が1社であったのに対し、2019年には措置命令を受けた企業等が40社(別途都道府県から15社)、課徴金納付命令を受けた企業等が17社となっており、社名やその違反内容まで公表されてしまいます。

今回の改正ポイント

このような状況下で、一般消費者の利益のより一層の保護を図るため、今回の改正のポイントとなるのは以下の通りです。厳罰化がより明確になる一方で、景表法違反が疑われる広告が増加傾向にある中、抑止力を高めるために、違反した事業者に自主的な改善を促す制度も導入される見込みです。

  1. 不当表示が故意に行われた違反表示に対し、行政措置を経ずに100万円以下の罰金を科す
  2. 過去10年以内に課徴金納付命令を受ける等、違反を繰り返す事業者には課徴金を割り増す
  3. 違反が疑われる事業者が是正措置計画(改善計画)を消費者庁へ申請し、認められれば当該 行為について措置命令等の規定を適用しないこととする「確約手続き制度」の導入
  4. 特定の消費者へ一定の返金を行った場合に課徴金額から当該金額が減額される返金措置に関 して、返金方法として金銭による返金に加えて第三者型前払式支払手段(いわゆる電子マネー 等)も許容する
  5. 適格消費者団体(※)が事業者に対して不当表示の差止請求を行うか否かを判断する際の参考とす るために、団体が事業者に対して、事業者の営業秘密等に配慮しつつ、表示の根拠となる資料の開示を要請できる

※適格消費者団体:消費者を守るための活動をしているNPO法人などで、国から認定を受けている団体。適格消費者団体は、企業が景品表示法の違反行為である優良誤認表示や有利誤認表示を行っているときは、その企業を相手として、「違反行為をやめなさい」という判決を求める民事訴訟(差止請求訴訟)を起こすことが可能。(適格消費者団体の一覧

ステルスマーケティングも今後は規制対象に

また、今回の法改正には関わりませんが、今後、ステルスマーケティング(広告であるにもかかわらず、広告であることを隠す行為)についても規制の対象となる方向性について検討が進められております。景表法第5条第3号に基づく告示を新たに指定するとともに、事業者の予見可能性を高めるために運用基準等が策定されていく見込みです。

景品表示法
第5条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
  1. 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
  2. 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
  3. 前2号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの

今回の景表法改正以外にも、民法改正(2020年4月施行)や消費者契約法改正(本年6月施行)等、企業を取り巻く環境が日々変化し、厳しさはさらに増してきております。自社及び自社商品等をしっかりと守るためにも、このような法改正にしっかりと対応していくことが今後も重要であると考えられます。