専門家コラム
Expert Column

ホームページを見て電話で問い合わせしてきたお客様。
問い合わせフォームと違ってプライバシーポリシーの同意にチェックしてもらったわけではないが、この場合、ホームページ内に掲載しているプライバシーポリシーの適用(“同意”)はどうなるのでしょうか?

電話口で聞いたお客様の情報も全て個人情報

自社や自社のサービス等に興味を持って問い合わせをしてくださる方は、自社にとって重要な見込み客となりますので、なるべくなら繋ぎ留めたい、成約に結び付けたいと考えるのが企業活動としては正常です。
ただ、お客様情報として氏名、住所、連絡先、生年月日等の情報を得た場合、それらは個人情報となりえますので、勝手に利用するとクレーム等にもつながりかねません。

WEBサービスを提供している事業者であれば、WEBサイト上にプライバシーポリシーへの同意としてチェックを入れてもらえる画面を提供すれば良いですし、対面でお会いするお客様なら、紙の同意書を用意してサインやチェックをいただければよいでしょう。

では、電話で問い合わせをしてきた方に対するプライバシーポリシーへの同意はどのように考えればよいでしょうか。

①プライバシーポリシーへの同意を口頭で得る場合
  • まず、プライバシーポリシーへの同意について、口頭(電話口)でそのまま同意をいただく場合について考えます。
    実際には、プライバシーポリシーへの同意は口頭でも成立すると考えられますので、自社で用意しているプライバシーポリシーを読み上げ、口頭で同意を得る、ということもできなくはないと思われます。
    ただ、口頭の同意、は後日、言った言わないのトラブルにもつながりやすく、証拠にも残しにくいこと、また、口頭でプライバシーポリシーを読み上げて同意を得る、という行為自体もあまり現実的とは言えないため、理屈としてはありうるが、現実的にはあまり採りえない方法と言えそうです。仮に、電話を事前に録音することの同意を得て後日の証拠にする、ということも考えられますが、電話口の相手方が問い合わせをした本人なのかどうか、も証明することは事実上困難であるため、リスクを考えるとやはり難しいと言わざるを得ないでしょう。
②プライバシーポリシーへの同意を口頭で得た後にメールや書面で同意を得る場合
  • 次に、電話で問い合わせをいただいた方の住所やメールアドレス等をいただき、プライバシーポリシーへの同意をいただきたい旨の口頭での同意を得た後、メールや書面でプライバシーポリシーへの同意を得る、という方法はどうでしょうか。
    この場合は、まず最初に口頭でプライバシーポリシーへの同意に関するメール・書面をお送りすることの同意を得て、その後に実際に相手の方にお送りし、同意する旨の回答を得られれば、同意としても問題ない対応である、と思われます。
    一方で、口頭ではプライバシーポリシーへの同意を得たい旨の同意を得て、メールや書面をお送りしても、相手方から回答がなかったら、それ以上に相手の方に同意を得ることは事実上難しくなってしまいます。重要な見込み客で高額な商品・サービスを購入いただく見込みがあるなら良いですが、わざわざプライバシーポリシーへの同意のためだけに同意書といって書面を送るか、という手間や費用といった問題もあると思いますので、その後対面でのアポイントを得られる等相当の見込みがないと必ずしも有効な手段とはいえなくなってしまうかもしれません。
③プライバシーポリシーへの同意を電話中にWEB上から求める場合
  • さらに考えられるのは、プライバシーポリシー及びそれに対する同意をWEBサイト上で公開している場合に、電話で問い合わせをいただいた際にWEB画面に誘導し、その場で画面を見ていただいて同意をしていただく、というような対応も考えられます。
    ただ、この点も相手の方の状況(WEB画面をその場で見られる状況にない等)にもよると思いますので、絶対的な方法とも言えません。プライバシーポリシーへの同意について本人情報も入力していただいたうえで同意ボタンを押していただく、という仕組みでないと、本人が同意したかどうかを確認できない可能性もありますので、後日同意した、同意していない、といったトラブルになりうるのは口頭での同意とたいして変わらない可能性もあります。

このように、電話で問い合わせをいただいたお客様に対し、プライバシーポリシーへの同意を得るのは意外に確実性ある方法がない、というのが現実かもしれません。

近年は問い合わせは問い合わせフォーム等インターネットを通じての方法にほぼ限るような対応をし、電話やメールでの問い合わせができないようなつくりのWEBサイト・アプリを提供している会社・サービスも増えてきています。
これは、なるべくインターネット上でのプライバシーポリシーへの同意を得る方法に誘導したい、という意図も見えます。
その対応が問い合わせをする側にとって本当に便利な方法なのかどうか、も含め、検討する必要があると思いますが、この点は業界・業態、提供する商品・サービス等でも変わってくると思われますので、よく検討されるのがよろしいのではないかと思います。