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- 2023年06月05日
- 2023年施行の電気通信事業法改正でSNSと検索サービスの一部は届け出必須に
2023年6月16日に施行予定とされる、「電気通信事業法の一部を改正する法律」とその関連省令等は、多くのインターネットサービス事業者に影響を与えます。その一つが、いわゆるCookie規制であり、以前のコラムでも少し触れたものです。それとは別に、もう一つ大きな影響となりうるのが、SNSや検索サービスの提供事業者の一部が新たに届け出等の規制の対象となる点です。
電気通信事業法の一部を改正する法律とは?
具体的には「検索情報電気通信役務」を提供する事業者や、「媒介相当電気通信役務」を提供する事業者が新たな規制の対象となります。
検索情報電気通信役務:入力されたキーワードに対応して、そのキーワードを含むウェブページのURLなどを出力する電気通信設備を提供する電気通信役務のうち、利用者の範囲・利用状況を勘案して、利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして総務省令で定めるもの。(例:GoogleやYahoo!等の検索サービス提供事業者)
媒介相当電気通信役務:不特定多数の者による投稿を記録・送信する電気通信役務のうち、利用者の範囲・利用状況を勘案して、利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして総務省令で定めるもの。(例:Twitter、TikTokなどのSNS提供事業者)
それぞれ規制の対象となる範囲が、総務省令で検討されておりますが、無料で利用を開始できるか、有料で利用を開始できるか、により、規制対象が異なります。(利用者数:前年度における月間アクティブ利用者の数の年平均値)
- 無料の電気通信役務の場合:利用者数が1,000万人以上である電気通信役務
- 有料の電気通信役務の場合:利用者数が500万人以上である電気通信役務
また、上記規制の対象となる事業者には、「特定利用者情報」の取扱いに関し、以下のような規制が新たに適用されることとなります。
- 情報取扱規程の整備・届け出をする義務(同法27条の6)
- 指定を受けた日から3カ月以内に、所定の事項を定めた情報取扱規程を制定し、総務大臣に届け出ること。
情報取扱方針を策定・公表する義務(同法27条の8)
特定利用者情報の取り扱いの透明性を確保するため、指定を受けた日から3カ月以内に、所定の事項を定めた情報取扱方針を制定・公表すること。 - 特定利用者情報の取り扱いに関する自己評価を実施する義務(同法27条の9)
毎事業年度、特定利用者情報の取り扱いの状況について評価を実施し、必要に応じて情報取扱規程・情報取扱方針の見直しを行うこと。 - 特定利用者情報統括管理者を選任し、届け出る義務(同法27条の10)
特定利用者情報の取扱業務を統括管理させるため、指定を受けた日から3カ月以内に、特定利用者情報統括管理者を選任すること。 - 特定利用者情報が漏えいしたときに報告する義務(同法28条1項2号ロ)
万が一特定利用者情報が漏えいした場合には、「漏えいの事実」と「漏えいの理由と原因」を、遅滞なく総務大臣に報告すること。
ここで示されている、「特定利用者情報」とは、通信の秘密に関する情報(個人間の通信の内容等)又は、利用者を識別することができる情報として、利用者に付与されるIDや番号等が含まれます。
以上の通り、利用者数が特に多いSNSや検索サービスは、今後総務省の規制の対象となります。Cookie規制と異なり、多くのインターネットサービス事業者には直接の影響はない部分と言えますが、現在、独自のSNSや検索サービスの開発・提供を行っている事業者は、今後規制の対象となりうる点、知っておかれることはとても重要かと思います。
また、それらSNSや検索サービスの利用者側の立場で考えると、利便性が高いため、プライベートのみならず、ついつい業務上でも使ってしまっている、という事業者の皆様も少なくないと思います。情報漏えい等していないか気にはなるけど、、、と思いながら利用しているのが正直なところではないでしょうか。この点、大手のSNSや検索サービスは今後規制対象となる、ということで、少し安心材料と言えるかもしれません。
とはいえ、自社で取り扱う個人情報が漏えいしてしまった場合には、その漏えいした媒体や原因に関わらず、個人情報保護法の規制(例 1000名以上の個人情報が漏えいした場合には個人情報保護委員会に報告義務がある、等)には引っかかる可能性がありますので、今回の電気通信事業法の改正と関係なく、個人情報の取扱いにはくれぐれも気を付けていただきたいと思います。
このような個人情報の取扱いについてや、新たなCookie規制等に関するプライバシーポリシー、利用規約等について、何かご不安に思われていることがあれば、ぜひ一度、当サービスにお問合せいただければと思います。