専門家コラム
Expert Column

今回は、ダウンロードコンテンツを提供するサービス事業者のための利用規約の注意点、という観点からコラムを書きたいと思います。

最近では、WEB上で、有料又は無料で様々なコンテンツを自由にダウンロードし、利用することが可能なサービスが増えております。
多くの場合は、自社で作成したコンテンツを提供することが多いと思いますが、第三者が提供しているコンテンツもあわせてダウンロードが可能なWEBサービスを提供していることもあると思います。このような場合、一般的な利用規約を作成する場合とは異なるポイントについて、何点かに絞って考えてみたいと思います。

1、コンテンツにかかる著作権の表示

自社もしくは第三者が作成した著作物をダウンロードし、利用することができる場合に、当該著作物にはほぼ、著作権の表示がなされていると思います。一般的に著作物には著作権が付与され、著作物を第三者が無断で無制限に利用できないように保護されています。
利用者がダウンロードしたコンテンツも、制作者の著作権が生じています。ですので、原則は利用者が著作者に無断で無制限に利用することは不可能です。
利用規約上でも、商用目的で複製、公開、送信、頒布、譲渡、賞与、使用許諾、転載、再利用しないことといった禁止事項として明示し、それらの行為を行う場合には事前にサービス運営者の許可又は著作者本人の許可を得ることを求めているのが通常です。

この点、著作権法第30条及び第47条の6では、私的利用(個人的な利用や家庭内での利用等)といった限定的な利用であれば、複製や改変が可能となっています。
ただ、実際にダウンロードされたコンテンツがその後利用者によってどのように利用されているか、追跡することはほぼ困難であり、場合によっては勝手に複製して第三者に譲渡され、勝手に改変されて商用に利用されてしまうようなこともあるかもしれません。

そのような行為に一定の歯止めをかける意味で、ダウンロードコンテンツについて、容易に削除困難な処理を施した著作権の表示を行うことや、ダウンロードコンテンツの私的利用の場合でも著作権の表示を削除しないよう利用規約に記載すること、それらに違反した場合には損害賠償請求や使用禁止・使用差し止め等の措置を取ることができること、等を利用規約に明示することで、私的利用や目的外利用への対応策とすることが、自社や著作者を守る上で大事なポイントとなるかと思います。

2、申し込み・契約の途中解約時の対応

また、利用者が利用規約に同意をしてコンテンツのダウンロード等を行った後に、仮に申し込みを撤回するような事態が生じた場合に備えて、ダウンロード済みのコンテンツを記録メディアやパソコン等の媒体及び契約サーバー等から、関連するファイルを全て削除いただくことを求める規定を設けることも大事になる場合があると思います。サブスクリプション契約で毎月の利用を想定しており、サブスクリプション契約者のみがダウンロード可能なコンテンツを複数提供している場合に、途中で解約されてしまったような場合に備えて、同じように考えて利用規約に明示することも考えられます。

通常の契約書で考えてみますと、預かりや貸与済みのデータ、資料、顧客情報等について、契約終了後は、自己の判断又は相手方の指示に従い返却又は破棄をし、その事実を証明する書面を提出する、という内容の条文を設けることがあります。
今回のように、WEBサービスのダウンロードコンテンツに関し、同じように利用者に削除済み証明まで行っていただく、というのはあまり現実的な措置ではないかもしれませんが、その場合でも、虚偽であることが判明した場合やコンテンツが勝手に利用・改変等を発見した場合に、同じく損害賠償や使用禁止・使用差し止め請求等ができるような措置を利用規約に記載しておくことは、サービス運営上の安心材料の一つになるのではないかと思います。

3、免責・保証に関する項目

ダウンロードコンテンツを通常利用可能なWEB環境や仕様、スペック等の条件をあらかじめ利用規約の別紙やサービスページ内等に提示することが一般的です。利用者の設備環境によっては利用ができない、という場合もあり、それがクレームになることもあるかもしれません。
そのような環境設定等は利用者の費用と責任の下でダウンロードし、利用いただくのが一般的ですので、このような場合は免責される、といった規定は必要です。

さらに、ダウンロードコンテンツの使用や使用結果に関する正確性、信頼性、完全性、最新性等を保証するものでもない、という点を明示することも重要かと思います。ダウンロードコンテンツの品質保持や最新性の保持等は努力義務として示すとしても、それらを保証するものではなく、利用者において何らかの障害が発生した場合でも、改変や修正・修補等対処するものではないことや損害賠償等の責任を負うものではないことを利用規約内に記載することは、リスクヘッジになるのではないかと思います。

以上のように、ダウンロードコンテンツを提供するサービス事業者が、利用規約を作成する場合を想定し、ポイントとなりそうな観点をいくつか示しました。これ以外にも、重要なポイントは色々とありますが、個別具体的に対応することが必要な場合も多くありますので、何か利用規約やプライバシーポリシー等でご相談されたい、という場合には当サービスに一度お問合せいただければと思います。