専門家コラム
Expert Column

2023年4月1日より、道路交通法が改正され、いよいよ公道を自動配送ロボットが走行する時代が始まりました。

自動配送ロボットとは

物流拠点や小売店舗などの荷物・商品を配送するロボットのことです。コロナ禍により、EC市場の拡大が進み宅配需要が急増する中、物流分野における人手不足や買い物弱者対策などの課題解決のため、活躍が期待されております。

2020年度以降民間事業者による自動配送ロボットの実証実験は既に実施されてきておりました。

  1. 東京都中央区の佃・月島エリアで、ENEOSホールディングスやZMPにより、飲食店やコンビニ等複数店舗の商品を顧客に配送。ガソリンスタンドをロボットの充電やデリバリーに関する拠点として実施。
  2. パナソニックは、神奈川県藤沢市の「Fujisawa SST」にて、店舗から個人宅への日用品などの配送サービスを実施。1名のオペレーターが、遠隔で4台同時に監視しながら公道を走行。
  3. 福島県会津若松市においては、TIS等がスーパーの商品をタクシーや路線バスでリレー輸送し、ラストワンマイル部分を自動配送ロボットが配送。

2023年4月1日以降は、以下の届出事項を提出することで、遠隔操作型小型車を通行させようとする場所を管轄する都道府県公安委員会への事前届出により実施が可能となりました。

届出事項
使用者の氏名等、通行する場所、遠隔操作を行う場所、非常停止装置の位置、ロボットの型式・仕様等。各メーカーなどが開発した遠隔操作型小型車を使用することになりますが、遠隔操作型小型車については、ロボットデリバリー協会が安全基準への適合を審査し、合格証を交付しているため、その合格証の添付も届け出時に必要となります。
主な注意点
  • 通行場所は、歩行者と同じ歩道の他、路側帯の設置された道路、歩車道の区別のない道路、道路の右側端となります。
  • 歩行者相当の交通ルールに従う必要があります(信号や道路標識等に従う、横断歩道の通行等)。
  • 歩行者に進路を譲らなければなりません。
  • 最高速度は時速6kmです。
  • 車体の大きさは、「歩行者の通行を妨げるおそれのないものとして内閣府令で定める基準に該当するもの」として、現行の電動車椅子相当の大きさ(幅70×奥行き120×高さ120cm)を超えないことが必要です。
  • 警察官等は、危険防止等のため、遠隔操作型小型車を停止又は移動させることができます。
  • 都道府県公安委員会は、使用者が法令に違反したときは、必要な指示(措置をとるまでの間の通行停止を含む)を行うことができます。
導入における課題
現状では、やはりコスト高が最もネックになるのではないかと思われます。
  • 電動車椅子相当の大きさで運べる荷物の大きさや量にかなりの制限がかかる。
  • 最高速度は時速6kmであるため効率的な物流にどれだけ寄与するのか不透明である。
  • 遠隔操作型小型車の導入や維持コストと、導入による売上・利益について損益分岐点を検討することが必要。
  • 遠隔操作者の知識・技能の確保や教育の実施が必要。
  • 遠隔操作者によるオペレーションが例えば1台のみであるならば、費用対効果は高くない。1名の遠隔操作者が複数台、様々なエリアで操作できる等も必要となる。
  • 破損や盗難などに関する保険制度の加入及び検討。

以上のように、まだまだ制度は始まったばかりで課題も多く、実益がどれくらい得られるかは不透明と思われます。

一方で、宅配需要はますます高まっております。さらに、物流業界には2024年問題もあります。

2024年問題とは、2024年(令和6年)4月1日から適用される「働き方改革関連法」によって物流業界に生じる諸問題です。働き方改革関連法により、「時間外労働の上限規制」、すなわち、年960時間が時間外労働の上限と設定されることとなるため、走行距離の短縮やトラックドライバーの収入減少、運送会社や物流業者の売上減少、物流コストの上昇などが起こると予想されております。
大手物流企業でも従業員確保はますます重要な課題となるものの、長時間労働が認められなくなるため、収入減となるトラックドライバーのなり手はますます減ってしまうだろう、と予測されています。

そうしますと、大小様々な物流業者において、人手不足を理由に、自動配送ロボットの導入をせざるを得ない、という状況になる可能性は十分考えられるところです。
また、他業界から新たに物流業界に参入し、自動配送ロボットを利用する宅配事業で収益化を図るような企業等も出てくる可能性はあると思います。

このような新しい取組みを行う場合、関係法令、ガイドライン等も踏まえたルール作り、が必要となります。大手又は先行した企業が利用規約・宅配約款等を策定し、公表していくと思いますが、既存の利用規約やテンプレートでは十分対応できない場合も多いと思います。
そのような場合にはぜひ一度当サービスにお問い合わせいただければ、一緒に考えるお手伝いをさせていただこうと思いますので、ご検討ください。