専門家コラム
Expert Column

民法改正により、2022年4月1日より成人年齢が18歳に引き下げられました。
18歳や19歳が親権者の同意なく契約の主体となることができるようになりました。これに伴い、早速トラブルが多発しております。
今回は、特にトラブルが多いとされる、脱毛エステサロンの事業者の観点から、この問題について考えてみたいと思います。

エステサロンで5万円以上の契約をする場合・・・

特定商取引法では、契約金額が5万円を超え、且つ役務提供期間が1か月を超えるエステティックサービスを契約する際には以下の1、2が義務付けられています。

  1. 事前に契約内容を説明し、概要書面を交付
  2. 説明した内容の契約締結、契約書の交付

通常、契約締結時に相手方の年齢を確認し、未成年者である場合には親権者の同意を得るのが通例かと思います。
今回の法改正で18歳であれば、親権者の同意なく単独で契約者となることができます。
実際に18歳の全日制高校に通う高校生が申し込んできた場合も、単独で契約を締結することは可能、となります。

18歳の選択できる支払い方法

さて、ここで一つ問題となると考えられるのが、支払方法ではないでしょうか。
確かに成人の18歳の高校生でも契約の主体にはなれる。では、自社が提供する数十万円もするようなエステサービスや商品を購入し、支払っていくことが可能なのかどうか、とても疑問に感じるところです。

そうしますと、事業者としては、大手信販会社等のショッピングローンに加盟することで、回収ができなくなるリスクを回避できるのではないか、と考えられます。
この点、注意が必要なのは、ショッピングローンやクレジットカードについては、18歳以上でも高校生だと作ることを基本的に認めていない、という現実があることです。(大学生以上であればショッピングローンに申し込みができるのが一般的とされます。)
さらに、18歳や19歳を対象にした場合、ショッピング枠、キャッシング枠、割賦枠といった利用限度額はおそらく低く設定されているものと考えられます。この点は民法改正前も若者に対しての利用限度額、という問題はついて回ったと思いますが、18歳の成年者、と契約する場合には、まず支払方法が妥当かどうか、本当に支払い能力があるのかどうか、支払限度額は問題ないのか、という点が契約上の注意点になってきているのではないかと考えられられます。

また、個人情報の保護、という観点からも注意点が増えたと考えます。
18歳以上という成年人口が増えたことにより、上記のように契約の主体者が増え、契約時にクレジットカード情報や本人確認書類等の情報を預かり、長期間管理・保存することも増えたのではないかと考えられます。

そうしますと、当然のことながら個人情報保護法を始めとした規制の対象となる個人情報を、これまで以上に多く取り扱う可能性が高まっているものと思われます。
特に気を付けないといけないのが、以下の2点ではないでしょうか。

  1. 個人情報の漏えい対応
  2. クレジットカード等の不正利用等に対するセキュリティ対策
1 個人情報漏洩の対応
  • 個人情報は「1000名を超える個人情報の漏えい」や「不正の目的をもって行われた漏えい等が発生した事態」、「財産的被害が生じるおそれがある事態」等が発生した場合は速やかに個人情報保護委員会に報告する必要があり、かつ、当該事態の状況に応じて速やかに、 概要、個人データの項目、原因などの内容を本人にとって分かりやすい方法で通知や公表を行う必要があります。
2 クレジットカード等の不正利用等に対するセキュリティ対策
  • 管理するクレジットカード情報等を含む個人情報の母数が増える可能性がありますので、その情報量や顧客数に応じて、セキュリティ対策として講じる管理費用の増加や、より強固なセキュリティ施策を講じる必要が生じる場合もあると思います。

このように、成年対象人口が増えたことにより、顧客層が拡大した業界・事業者も増えたと思います。それ自体は喜ばしいことかもしれません。ただ、消費者保護の観点からも、事業者を取り巻く環境は年々厳しくなっているのも事実だと思います。
いかに収益を確保していくか、事業者側もさらなる知恵や工夫が必要とされ、かつ、法的観点からも自社をしっかりと守っていくことが今後ますます重要になるのではないかと思います。