専門家コラム
Expert Column

今や、あらゆる業種・あらゆる企業・法人等がホームページを作るのが当たり前、とも言える時代になったと思います。
ホームページで多いのは、「会社紹介」的な意味合いで事業・サービスの概要や会社情報、問い合わせフォーム等を掲載したものですね。
一方で、事業・サービスを前面に打ち出したホームページ(WEBサービスやアプリケーション等を含む)も少なくはありません。
WEBサービスやアプリケーションサービスを利用する場合には、ほとんどの場合、利用開始前に、利用規約への同意を求められ、同意した後にサービスのダウンロードができたり、利用を開始できたりします。

では、「会社紹介」的なホームページの場合にも利用規約を作成し、掲載する必要があるのか、考えてみたいと思います。

利用規約とは

まず、利用規約について考えてみますと、利用規約とはサービスを提供する事業者がユーザー向けにサービスの利用上のルールをまとめたもの、と言うことができます。
事業者が提供するサービスについて、ユーザーが好き勝手に自由に利用し、サービス提供に支障が生じるような行動を行ったり、他の利用者に迷惑を与えたり、といったことがないように、そのサービスのルールを事業者側で定めたもの、となります。
事実上、そのルールに同意をしないと、ユーザーはそのサービスを利用することができなくなりますので、利用規約に拘束される、と言えます。その意味で法的な契約を行った、ということもできます。

一方で、利用規約の作成が常に法律で義務づけられているわけではありません。
令和2年4月1日に施行された改正民法により、定型約款の規定が新しく設けられましたが、利用規約(定型約款)を常に作成しなければならない、という規定ではありません。
事業者としては、上述の通りサービス提供上の便宜もあり、不特定多数のユーザーが利用することを想定したうえで、不特定多数のユーザーと個別の契約を締結していくことの困難さや、不特定多数のユーザーが利用することによるトラブルが極力生じることがないように、本来不要とも言える利用規約(定型約款)を作成し、提示し、同意を個別にもらう、という手段を取っている、というのが現状です。

このように考えますと、不特定多数の方が利用することを想定したWEBサービスやアプリケーションサービス等を提供する場合には、利用規約を作成することが事実上、必須となると言うことができます。

「会社紹介」的なホームページにも利用規約は必要か

では、「会社紹介」的なホームページの場合には、利用規約の作成・提示は必要なのでしょうか。

サービスの概要やサービスの提供方法、サービスの相手先等、様々な条件が関係してくるので一概には言えませんが、利用規約を作成しホームページ上に提示する必要がある場合とない場合があるのではないか、と思います。ここでは、利用規約を作成・提示した方がよいと考えられう場合について、考えてみたいと思います。

利用規約を作成・提示した方がよいと考えられる場合

  1. WEB契約の締結で自社サービスの利用を認めてもよい場合(印紙代の節約や電子契約による便宜、サービスの提供に関する事業者の考え方を示したい場合等)
  2. ECサイト等の物販を行う場合
1について、利用規約(定型約款)は、不特定多数の方に自社サービスを利用してもらうことを想定してあらかじめ作成し、提示するものです。ですので、本来不特定多数の方が自社サービスを利用することを想定しない場合には、利用規約は不要で、個別契約を1社1社、1人1人と結べばよい、と考えられます。
ただ、現在のように紙の契約書の締結から、電子契約書の締結も増えている現状を踏まえ、オンライン上での契約締結を進めたい場合には、あらかじめ利用規約をホームページ上に提示し、同意を得てサービス提供を開始することも問題はなく、そのような契約形態も増えてきていると考えられます。

また、紙の契約書を締結する場合、契約内容や金額によって印紙代が契約当事者それぞれにかかってくる場合もありますが、オンラインでの契約に変えることで印紙代の節約につなげる、という考え方も可能ですので、そのような便宜を図ることも可能となります。

例えば、業務コンサルティングを提供する事業者で、その契約内容が仕事の完成を求められる内容であり、仮に1年間の契約であった場合、紙で契約を締結すると印紙代がかかる可能性がありますが、利用規約を活用したオンライン契約の形を取ることで、印紙代を節約できる可能性もある、ということです。(印紙代がかかるかどうかは、契約の内容や条件、管轄の税務署の判断等もありますので、その点はご注意ください。また今後電子契約について印紙代がかかるような法改正がされる可能性もありますので、その点はご注意ください。)

さらに、自社サービスを検討いただいている方に対し、自社サービスの考え方や契約条件等をあらかじめホームページ上に示すことで、競合する他社サービスと比較検討している方にとっては、検討しやすくなる、という利点もあるかもしれません。
通常は、事前に契約条件等をすり合わせたうえで契約締結、というのが契約の流れかと思いますが、契約書を提示されたときに、事前に言われていなかった条件が様々に提示されて驚く、といった場面に遭遇された方もおられるかもしれません。
利用規約がサービス利用の契約条件(ルール)の提示であるならば、そのサービスに対する事業者の考え方を示すことができるもの、と言うことができると思いますので、契約の相手方の予測可能性を害しないで契約に進むことが可能になると考えられます。
2については、WEBサービスやアプリケーションサービスにも近いかもしれませんが、ホームページ上やECサイトで物販を行う場合も、不特定多数の方がサイトから購入する場合が想定されますので、利用規約の作成・提示は必要になるかと思います。
この場合も、Amazonや楽天等のモールに出店する場合には、それぞれのモール運営事業者が定めている利用規約等もあると思いますので、そのような利用規約等との整合性も取りながら利用規約を定める必要があるかと思います。
一方、そのようなモール出店ではなく、自社運営型のサイトの場合も、契約の締結時期、支払条件、返品や契約解除の条件等、様々な内容を定めた利用規約の作成が必要になってくると思います。

このように、利用規約をホームページ上提示するのが必須と思われる場合だけでなく、利用規約を作った方が利便性が高くなる場合、も増えてきていると感じますので、自社サービスの契約締結方法や自社ホームページの見直しとあわせて、利用規約の作成・提示を一度、ご検討してみるのはいかがでしょうか。