専門家コラム
Expert Column

2022年4月1日より成年年齢が20歳から18歳へと変更されました。今回は、未成年者との関わりと利用規約、について見ていきたいと思います。

こんな利用規約をまだ使用していませんか?

まず、2022年4月1日に改正民法が施行されたことにより、まさかとは思いますが、以下のような利用規約の例をそのまま使用されている、ということはないと思いますが、念のためご確認ください。(もし法改正前からそのままの利用規約の場合は早急に修正が必要です。)

利用規約 例
第●条 20歳未満の未成年者は、会員登録の申請を含む当サービスの利用に関する一切の行為につき、親権者等の法定代理人の同意を得た上でこれを行うものとします。未成年者が会員登録を完了した時点で、当サービスの利用及び本規約の内容について、法定代理人の同意があったものとみなします。

これまでは、利用規約上で、未成年の定義について、年齢まで丁寧に記載する場合もありましたが、法改正に伴い、現在は年齢の記載をせず、未成年、という表記で利用規約を作成することが多くなったと思います。

民法改正で「未成年者の利用・登録・課金等」とWEBサービスの関係はどうなった?

次に、法改正と関係なく、これまでも様々なトラブルが生じていた、「未成年者の利用・登録・課金等」とWEBサービスについて少し触れていきたいと思います。
WEBサービスの中で、特にゲーム等未成年者をターゲットに、もしくは未成年者の利用が想定されたサービスも少なくありません。

ここでも、民法が関係してきます。

(成年)
第四条
  • 年齢十八歳をもって、成年とする。

(未成年者の法律行為)
第五条
  • 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
    1. 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
    2. 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

(制限行為能力者の詐術)
第二十一条
  • 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

民法第5条第1項で、未成年者の法律行為については、法定代理人(親等)の同意が必要である、とされているのはよく知られています。そして、同条第2項で、法定代理人の同意がない法律行為は取り消しの対象となっております。
一方、民法第21条では、未成年者が「詐術」を用いたときは、その行為を取り消すことができない、となっております。この「詐術」を用いたのかどうかが問題になってくるわけです。
(なお、実際に詐術に該当するのかの判断は、個別具体的な事例を総合考慮して判断することとなっておりますので、一概にお伝えすることはできません。)

特に問題となってくる場面が、利用規約上、未成年者の登録・利用を制限しているWEBサービスで年齢等を偽って登録・利用している場合や、有料課金サービスに未成年者が親のクレジットカード等を利用して課金し、親が取り消しを求めてくるような場合かと思います。

一般的に、親等が未成年者の行為である、として取り消すことができる(詐術に当たらない)と解されてしまう例として、以下のような場合があります。

  1. 単に「成年ですか」との問いに「はい」のボタンをクリックさせる場合
  2. 利用規約の一部に「未成年者の場合は法定代理人の同意が必要です」と記載してあるのみである場合

そうしますと、このような内容を利用規約やサービス画面上に記載し、クリックさせる(同意させる)だけでは、未成年者による登録や利用を制限することができず、有料課金をしていた親からの返金請求に応じる必要が出てくる、という考え方となります。

一方で、今回の法改正と関連し、仮にWEBサービス登録時や利用規約に同意をした時点で未成年(例 18歳)であった利用者が、2022年4月1日以降成年となった場合に、成年となってからサービスを利用した場合、未成年の時のWEBサービス等を利用した行為を追認【法律行為の欠点を、あとから補充して完全なものにすること】させるような規定を設けておくことで、多少のリスクヘッジとなる場合もあるかもしれません。

ただ、そもそも未成年の登録・利用を認めてもよいサービスなのか、追認させる必要性があるかどうか、等提供しているサービスや利用者属性等も踏まえ、個別具体的に判断する必要があると思います。

このように、未成年者への対応や、未成年者の親からの取消請求等も見込んだ利用規約の作成・修正は2022年4月1日の民法改正とも関係し、とても重要なポイントとなります。
もし利用規約の改定等でお悩みの場合は、一度当サービスにお問い合わせいただければと思います。