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- 2022年11月14日
- 近鉄に見習う!転売で悩んでいる事業者向け、転売対策は規約見直しにあり!
皆さんは「ダフ屋」という言葉をご存知でしょうか?最近、コンサート会場やスポーツ観戦に向かう途中で「余ったチケット買うよ!」とか「チケットあるよ!」と声を欠けられたことがあるでしょうか?
ひと昔前までは多く見かけたこの「ダフ屋」。悪質な業者が、チケットの高値転売を目的として希少チケットを買い占めてこのダフ屋行為を行っていましたが、各地の迷惑防止条例等により取り締まりが強化され、今ではすっかり見かけなくなりました。
その後、2010年代になって問題になったのが、「ネットダフ屋」です。多くの迷惑禁止条例が「公共の場」での迷惑行為であるとしてダフ屋行為を禁止していましたが、ネット空間は「公共の場」と解釈されず、しばらくは野放しの状態が続きました。
このネットダフ屋については、TVCMまで展開していた大手チケット転売サイトによる、悪質な出品者から大量入手したチケットの高値転売などが社会問題化し、不正転売容疑により警察の捜査対象になったことから、同サイトは2018年5月に閉鎖に追い込まれることになりました。
チケット不正転売禁止法施行
この問題を背景に、2019年6月「チケット不正転売禁止法」が施行されました。
この法律は、国内で行われる映画、音楽、舞踊等の芸術・芸能やスポーツイベント等のチケットのうち、「興行主の同意のない有償譲渡を禁止」する旨が明示され「座席指定」等がされたチケットの不正転売等を禁止する法律です。
不正転売とは、
興行主に事前の同意を得ずに反復継続の意思をもって行う有償の譲渡であって、興行主等の販売価格を超える価格で特定興行入場券を転売すること
を意味します。
対象となるのは、下記の1〜3に該当する不特定又は多数の者に販売されるチケットです。
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- 販売に際し、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し、その旨が券面(電子チケットは映像面)に記載されていること。
- 興行の日時・場所、座席(又は入場資格者)が指定されたものであること。
- 例えば、座席が指定されている場合、購入者の氏名と連絡先(電話番号やメールアドレス等)を確認する措置が講じられており、その旨が券面に記載されていること。
※座席が指定されていない立見のコンサート等の場合、購入者ではなく、入場資格者の氏名と連絡先を確認する措置が講じられており、その旨が券面に記載されていること。
筆者が保管しているここ数年のチケット半券を幾つか実際に確認したところ、殆どのチケットの裏面に細かい字で以下の例の様に記載されていました。
- 営利を目的としたチケットの転売は、いかなる場合にも固くお断りします。
- 転売されたチケットは無効となり、入場をお断りさせて頂く場合があります。
- 転売により購入されたチケットのトラブルについては一切の責任を負いません。
また、筆者はチケットをネットで注文しコンビニで受け取ることがほとんどですが、2019年6月移行のチケットからは、確かに券面に氏名が記載されていることが確認できました。
上記の通りネットダフ屋行為についても、「チケット不正転売禁止法」の施行により確実に対策が取られ、今では摘発の件数も大幅に減少しています。
鉄道きっぷの高値転売対策は?
さて、前置きが大変長くなりましたが、実はここからが今日の本題です。
前述の通り「チケット不正転売禁止法」は国内で行われる映画、音楽、舞踊等の芸術・芸能やスポーツイベントのチケットが対象です。これらのチケットと同様に高値転売の問題に悩まされている代表的な業界が鉄道業界です。
コンサートチケット等が「チケット不正転売禁止法」の対象になったのは、代替性が無いコンサートのチケットが、「欲しいのに買い占められて買えない」ということを回避する為です。
旅客チケットについては、代替性が有るとみなされていることからか、不正転売禁止法の対象にはなっていません。
これについて、鉄道業界関係者や鉄道ファンから、
- 記念きっぷはもとより、繁忙期の指定席なども代替性があるとは言えない。
- 「きっぷが買い占められて正規の値段で買えない」「完売のはずなのに実際は空席が目立つ」という問題を解決して欲しい。
- コンサートチケットの不正転売を禁止するのであれば、鉄道の世界でもしっかりと網をかけてほしい。
という声もあげられている状況ですが、今のところ法的な規制は設けられていません。
近鉄がとった対策とは?
これに対し近畿日本鉄道は、今年の10月12日付で自社の旅客営業規則を改訂し、特別旅行券が無効になる場合として、以下の通り「転売したとき」「転売しようとしたとき」そして「転売を利用して購入したとき」を追加しました。
- 旅客営業規則
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第110条 特別急行券は、次の各号の1に該当する場合は無効として回収する。
- 乗車列車を指定した特別急行券を指定以外の特別急行列車に使用したとき
- 券面に表示された事項を塗り消しその他改変して使用したとき
- 偽造の特別急行券を使用したとき
- 大人が小児用特別急行券を使用したとき
- 券面の表示事項が不明となった特別急行券を使用したとき
- その他特別急行券を不正乗車の手段に使用したとき
2 前項のほか、特別急行券は、次の各号の1に該当する場合は無効として回収することがある。- 特別急行券を、所定の料金を超えて、第三者に転売し、または転売しようとしたとき
- 前号の転売行為を利用して特別急行券を購入したとき
※下線部分を2022年10月12日付追加
参照元:近畿日本鉄道株式会社 旅客営業規則
規定の趣旨は「チケット不正転売禁止法」と同じく「所定の料金を超えて」という部分がポイントで、フリーマーケットサイト等での高値転売をターゲットとしている半面、金券ショップなど安価に販売することを目的とした事業者はターゲットからは外しています。
高値転売行為自体を抑制する効果がどの程度出るかは今後注目されるところですが、いざ問題が生じた場合には高値で転売されたチケットを無効として回収できることになりますので、問題解決には大いに寄与出来ますし、その積み重ねで不正転売の抑止効果も高まって来ると考えられます。
これまで、鉄道会社の旅客営業規則や運送約款に、高値転売を直接的に禁止する旨の規程を設ける例はまずありませんでしたので、今後追随する事業者が増えることも予想されます。
高値転売は悪質な出品者の不当な利益になるという側面と、一般の消費者がチケットを入手しにくくなるという側面が問題になります。自社の良質なサービスを、望まれる消費者に、適正価格で提供する為には、転売対策は非常に重要です。
不正転売問題に法律の規制が追いついていない場合に、約款や規約の見直しで一定の対策が打てることを示す一例として、今回は近鉄の旅客営業規則に関する新しい取り組みを取り上げました。
こういった問題を未然に防止する為に定期的な利用規約の見直しはとても重要です。
利用規約等の見直し専門サービスのDOUII(ドウイ)に是非ご相談下さい。